K-POPを使った韓国語学習方法の例を紹介します。全てこのとおりにやる必要はなく、各自が自分なりに活用できそうな部分、つまり「いいとこ取り」で試してみてください。
記事の目次
Step 1 素材(曲)を選ぶ
自分が愛する歌手・グループがいる人には、まずこの点は問題にならないでしょう。そういう人は自分の忠誠心をフル稼働して、その歌手やグループの曲を全曲制覇するつもりで取り掛かってください。
そこまで誰かの熱烈なファンでないという人は、「好きな曲、気に入った曲、良さそうな曲」「カラオケで歌ってみたい曲」など、各自の基準で選べば大丈夫です。
ただし、一定の曲数をこなさないと成果は出づらいので、自分なりのテーマを持つなど、続けていける(曲を選び続けていける)ための、何かしらの工夫があるとよいでしょう。
歌の傾向としては、やはりテンポの早い曲は覚えづらく、発音もしづらいです。おすすめはスローテンポやミディアムテンポの曲ですが、バラード大国の韓国では、ヒップホップ歌手であれメタルグループであれ、必ずバラード曲があるので、そのような観点で曲を探すのはさほど難しくないでしょう。
トロット(韓国の演歌のような曲)も全体的に学習には向いていると言えます。
歌詞が心に響くかどうかは、個人的な感性や体験による面もありますが、どうせなら良い歌詞を通じて美しい言葉に出合ってみたい、自分の心が動かされるような作品に出合ってみたいという人もいるでしょう。
노랫말(歌の言葉)、가사(歌詞)といった単語に좋은(良い)、아름다운(美しい)、(가슴에) 와닿는(<心に>響く)、시적인(詩的な)などの言葉を組み合わせてネット検索を掛けると、そうしたテーマを扱った過去の番組や記事、個人のおすすめ曲を記したブログなどが見つかります。
歌番組
韓国の歌事情に疎い場合は、韓国の歌番組を見たり聴いたりして、自分の趣味に合った歌手や曲を探してみましょう。
ケーブルテレビが主になりますが、韓国の歌謡番組の幾つかは日本で見ることができます。また、スマホのアプリでFM放送を聴くことも可能です。
韓国の歌番組を見る方法ですが、日本でもCS放送を通じて、大体のK-POP番組を見ることはできます。ただしリアルタイムでなく、番組(放送局)ごとにチャンネルが異なるので別途契約する必要があります(原則有料)。
韓国のK-POPの番組としては、「쇼! 음악중심(MBC)」「뮤직뱅크(KBS2)」「SBS 인기가요(SBS)」「엠 카운트다운(Mnet )」「쇼챔피언(MBC music)」「THE SHOW(SBS MTV)」があり、30~40代向けの番組としては「불후의 명곡(KBS2)」「EBS 스페이스 공감(EBS)」があります。
また中高年を主対象にした番組に「가요무대(KBS1)」があります。
韓国のFM放送は、スマートフォンのアプリを入れることで、無料で聴くことができます。
放送局がリリースしているアプリには、「KBS kong」「MBCmini」「SBS 고릴라」があり、幾つもの放送局を登録して聴くことができるアプリに「한국 라디오」があります。
いずれもiPhoneとAndroidのどちらでも使用することができます。
YouTube
ネット上の動画サイト、YouTubeには韓国の歌手・グループの公式サイトが多く存在し、曲を聞くことができます。また上記で紹介した韓国の歌番組の録画も一部見ることができます。
YouTubeでは今見ている動画と関連づけて、視聴者が気に入りそうな動画をどんどんすすめてくるので、それらを順に見ていけば、自分の趣味にあった歌手や曲に必ず出会えるはずです。
Step 2 ノートを準備する
さて、いよいよ学習を始めますが、まず初めに、歌詞学習用のノートを準備しましょう。そして歌詞や自分の訳などを全てこのノートにまとめていきます。
こうすることで、歌詞だけでなく、学習した内容が散逸しなくなりますし、「このノートを埋め尽くすくらいに勉強してやるぞ!」と気合も入ります。
好きなデザインのノートを探したり、自分なりに工夫したカバーをかけたりすることで、使う前から気持ちが高揚します。
使い方の例としては、見開きの左ページに歌詞(発音)を記し、右ページには訳と単語などを記すのがオーソドックスです。
Step 3 歌詞をノートに書き写す
歌詞は書き写すことをおすすめします。「書写」の学習的効果について、ここでは深く立ち入りませんが、歌詞を書き写すことが、ハングルを書く練習になることはもちろん、手を動かすことで、よりたやすく、正確に歌詞を覚えられるからです。
もし、特定の歌手に対する愛があるのなら「当然全て手書き」という意見もあります。
その時間がない、そこまではこだわらないという人は、ネットなどでテキストを探して、それをプリントしてとじる/貼り付けるなどすればよいでしょう。
歌詞の探し方
「曲名(歌手名)+가사」でネット検索をすれば、ほとんどの場合、歌詞を参照することができます。韓国の歌詞検索サイトもありますし、個人がブログやホームページに書いて掲載していることもあります。
また最近の歌番組ではテロップで歌詞を表示することが多く、YouTubeでも該当曲ページのコメント欄に誰かが歌詞を投稿していることが多いです。
ただし見つけた歌詞が自分の持っている音源のとおりとは限らず、バージョンの異なる歌詞だったり、間違いを含んでいたりする場合もあります。
Step 4 歌詞を訳す
歌詞が準備できたら、次は自分で歌詞を訳してみましょう。訳詞をネットなどから拝借してくることができる場合もありますが、なるべく効果的に勉強し、韓国語の力を付けることを目的とする本稿では、その方法はすすめません。
分からないところは辞書を何度も引きながら、自分なりに意味を把握し、頭を使って適切な訳を考えることが一番の学習です。
既存の訳は、自分の訳が正しいかどうかを最後に確認したり、どうしても意味が分からない箇所を確認したりするときに活用するといいでしょう。
Step 5 単語や文法項目をノートに整理する
知らない単語や語尾、表現、助詞などの文法項目は、ノートの右に整理します。整理するときには、辞書形も記すように心掛けましょう。ネットの辞書は多くの場合、活用形を入力しても辞書形の見出し語を提示してくれます。
こうして書きためていき、ノートが埋まることで、自分だけの「MY歌詞ノート」が出来上がります。
歌で覚えた単語や文法項目はそれ自体忘れにくいものですが、それでも個々の意味を忘れてしまうこともあるので、後でたまに見直してみるとよいでしょう。
Step 6 曲を聴いて、発音を観察する
Step 5までで韓国語の学習が十分成り立ちますが、ここまではインプットのための学習。Step 6からは歌詞をアウトプットに役立てるための学習に取り掛かります。
まず曲を聴いて、文字から想像した音と異なる発音をマークします。逆に歌を聴いた後で歌詞を見て、発見したことや意外に思ったことがあったらそれを記します。
歌を聴いていると、文字から推察できる音と、実際の曲の発音が「一致しない」と感じるところが必ず出てくるものですが、そこがまさに自分にとっての学習ポイントなのです。
動画を見られる場合は、どんな口の形でその音を出しているのかも観察してみましょう。
Step 7 歌を練習する
「人前で歌を披露するのは苦手」な人も、ここは語学学習と割り切って、声に出して歌ってみましょう。
ある程度練習して韓国語が口をついて出るようになったら、次は歌手の歌い方をまねてみましょう。これを完全にコピーするくらいまで繰り返します。
動画を見られる場合は、口の動きもまねてやるのがポイントです。
普段は退屈で苦行に近い発音練習も、歌の練習と思うと割合楽に行えるのが、先にも述べたとおりの歌で韓国語を学ぶメリットでもあります。
Step 8 歌を披露する
せっかく覚えた歌は、カラオケで歌ってみるべし。一人カラオケで練習するのもいいですが、人前で、可能ならば韓国人の前で披露するのがいいでしょう。
歌詞を見ないで歌い上げることができるレベルになれば、たいていの韓国人はあなたの韓国語を褒めてくれるはずです。それでますますやる気が出てくるという好循環が期待できます。
以上を繰り返し、曲数を増やしていきましょう。たまに2、3曲だけやるのではなく、アルバム丸ごとやったり、あるいはノートを1冊作るくらいコツコツ続けていったりすると、次第に違いが出てくることに気付き、学習も楽しくなってくるはずです。
最後に、これも本来は韓国語の勉強のためにやることなので、歌詞から学んだ表現は、歌の世界だけで終わらせずに、ぜひとも普段の会話で使ってみるように意識的に努力しましょう。
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「歌で韓国語を学ぼう!」
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