こんにちは。韓国語講師の清水碧(しみずみどり)です。韓国語を教える中で、大学院などで学ぶような専門的な内容に興味を持っている学習者の方が多いと感じています。ここでは専門的な内容の中から、普段の韓国語学習に直結するものを選んで紹介していきたいと思います。
今日は発音の話です。発音変化「流音化」の法則の復習をしつつ、流音化が起きない例について学びます。そして、最後に外来語における「ㄴ+ㄹ」の発音について一緒に考えていきましょう。
流音化とは
「ㄴ」と「ㄹ」が隣り合うと、「ㄹㄹ」の発音になります。これを流音化と言いますね。例を見てみましょう。
「ㄴ+ㄹ」の発音が「ㄴㄴ」になる場合
ただし「ㄴ」と「ㄹ」が隣り合って「ㄴㄴ」の発音になることがあります。例えば以下のような場合です。
どのような場合に「ㄴ+ㄹ」が「ㄴㄴ」の発音になるのでしょうか。答えは、2文字以上の漢字語の後ろにㄹで始まる漢字語の接尾辞が付く場合です。
「接尾辞」とは、単独で用いられることがなく必ず単語の大元になる部分の後ろにくっついて新しい単語を作る部分のことです。
上の정신력(精神力)を例に見ていきます。정신(精神)という独立した1つの単語に接尾辞-력(力)が付くことで、정신력という新しい単語が作られています。
接尾辞-력は정신以外にも、例えば결단(決断)に付いて결단력(決断力)、행동(行動)に付いて행동력(行動力)という新しい単語を作り出します。
どのような場合に流音化し、どのような場合に流音化しないのか
このように、漢字語の後ろに漢字語の接尾辞が付くときには「ㄴ+ㄹ」が「ㄴㄴ」の発音になりますが、上に挙げた接尾辞と同じ漢字であっても「ㄴ+ㄹ」の発音が「ㄹㄹ」になる場合があります。
例えば以下のような場合です。
上の2つの単語には정신력と同じ력が含まれているにもかかわらず、それぞれ発音が[권녁]ではなく[궐력]、[인녁]ではなく[일력]になります。
その理由を、정신력が정신と-력から成るという上の話を思い出しながら考えてみましょう。
정신력という単語は、정신という独立した1つの単語に-력という接尾辞が付くことでできるという仕組みでした。つまり、정신と-력の間に切れ目があるのです。
それに対して、권력(権力)を見てみると、권력は권+-력ではなく권력で1つの単語であり、권と력の間に切れ目がありません(「권」だけでは意味が分かりませんね)。
권력のように、력が接尾辞として用いられているのではなく권력全体で1つの単語になっている場合は、同じ漢字語で「ㄴ+ㄹ」の組み合わせであっても、発音は「ㄴㄴ」ではなく「ㄹㄹ」になるのです。
정신력と권력の他に、생산량(生産量)[생산냥]と분량(分量)[불량]における량(量)の発音の違いも同じ仕組みで説明ができます。
온라인(オンライン)の3つの発音
ここまで漢字語の「ㄴ+ㄹ」の組み合わせについて見てきました。それでは皆さんは以下の単語をどのように発音するでしょうか。
韓国の国立国語院の辞書である『표준국어대사전(標準国語大辞典)』には、外来語についてはその発音の仕方が記載されていないのですが、国立国語院が一般の人からの質問に回答しているものを見ると、온라인の発音として[온나인]と[올라인]の2つを認めています。
それぞれの発音についてなぜそうなるかを考えてみると、まず[온나인]については上に挙げた정신력と同じパターンで考えると分かりやすいです。
つまり、온라인を[온나인]と発音する場合、온(オン)と라인(ライン)の間に切れ目があると考え、온라인という単語を온と라인という2つの要素からできた1つの単語と見なしていると言えます。
一方で[올라인]と発音する場合は、上に挙げた권력と同じパターンで、온と라인の間に切れ目がなく온라인全体で1つの単語であると見なしていると言えます。
온라인の発音については、実際には上に挙げた2つの発音の他に、온라인を文字通り[온라인]と発音している場合も多くあります。
ラジオのアナウンサーもこのように発音しているのを耳にします。온라인はよく用いられる単語なので、実際にどのように発音されているか観察してみましょう(^^)