韓国映画の大作が苦戦していた昨年、大きな話題を集めた日本のアニメーション『THE FIRST SLAM DUNK』。
原作漫画やアニメーションのファンだった40代以上の男性から始まった人気が20代、30代の女性たちへと広がり、何度も劇場に足を運ぶ=N차 관람(N次観覧)の観客も登場して大ヒットとなった。
今回紹介する『리바운드(リバウンド)』は、そんなバスケットボールへの関心の高まりの中で公開された、青春スポーツドラマだ。
廃部寸前の名門バスケットボール部の運命は?
かつては強豪校として知られていたものの、部員も減少し廃部の危機にある釜山中央高校。
兵役の代わりに公務に従事する公益勤務要員として母校に戻ってきた卒業生강양현(カン・ヤンヒョン)は、中学時代から好選手として知られていたポイントガードの기범(ギボム)、負傷によってバスケットボールから離れていたフォワードの규혁(ギュヒョク)らをなんとか集めてチームを作り試合に出場するのだが……。
失敗を経験した人たちへの応援歌
2012年の全国高校バスケットボール大会で、交代メンバーなしに奇跡の快進撃を見せた釜山中央高校のコーチと選手たちの物語を、『기억의 밤(記憶の夜)』(2017)の장항준(チャン・ハンジュン)監督が映画化。
妻で人気脚本家の김은희(キム・ウニ)も共同で脚本執筆に参加し、実力も性格もばらばらの寄せ集め選手たちが、次第にチームとしてまとまっていく姿を感動的に描き出している。
バスケットボールをテーマにした作品でありながら、華やかな「ゴール」ではなく「リバウンド」をタイトルとしているところからも、「一度でゴールに入らなくても、落ちたボールを追い掛けてつかめば、チャンスは何度でもやってくる」という、監督のメッセージが伝わる。
若手俳優たちが実在の人物を好演
韓国映画にはスポーツをテーマにした作品がそれほど多くないが、ハンドボールのオリンピック代表選手たちが主人公の『우리 생애 최고의 순간(私たちの生涯最高の瞬間)』(2007)や、ろう学校の野球部にプロ野球選手が臨時コーチとしてやってくる『글러브(ホームランが聞こえた夏)』(2011)、南北合同チームで世界卓球選手権大会に挑んだ『코리아(ハナ 奇跡の46日間)』(2012)といった実話をベースにした秀作を思い出させる。
また、学生の間だけ部活でスポーツを行う人も多い日本と違い、運動部への入部がそのままプロや国家代表を目指すことを意味する韓国の部活動の厳しさも感じられる。
がむしゃらにチーム再建を進めるカンコーチ役はドラマ「마스크걸(マスクガール)」(2023)や「닭강정(タッカンジョン)」(2024)でコミカルからシリアスまで多彩な演技を見せている안재홍(アン・ジェホン)。
実在の人物になり切るため、10キロ増量して体を作り、口調やしぐさなども研究したという。
けがにも負けず試合に挑むギュヒョク役は、ボーイズグループ2AMのメンバーで、芸能界きってのバスケットボールの実力の持ち主といわれている정진운(チョン・ジヌン)。
また、中学時代にチームメートだったギュヒョクとの葛藤を抱えるギボムを「낭만닥터 김사부3(浪漫ドクター キム・サブ3)」の이신영(イ・シニョン)が好演。
厳しい練習を積んで撮影に臨んだ彼らが迫真のプレーを見せている。