2010年代を映画史で振り返る

韓国映画ファン必見!2010年代を映画史で振り返る

2010年代(2010〜2019年)は、韓国の人たちが「より映画を見るようになった」10年と言えるだろう。

映画の観客数は2013年に2億人を超えて以来、2018年まで2億1000万人台で推移。平均して1人当たり4本以上を1年間に見ている計算になる。ちなみに日本は1本強なので、その違いの大きさが分かる。

観客の増加に伴い「記録的な」ヒットの指標となっていた「観客動員1000万人超え」の韓国映画も10年間で14本と続々登場した。

コロナ禍を経て、現在は観客の劇場離れが続くが、逆境に強い韓国映画界ならではの打開策をきっと見つけていくはずだ。

レトロブームの到来

2010年代の最初に吹き荒れたのは、音楽シーンなども巻き込んだレトロブーム。

代表作は、親友との再会をきっかけに40代女性の過去(1986年)と現在が交互に描かれていく『써니(ソニ)(サニー 永遠の仲間たち)』(2011年)だろう。

翌年には1990年代の大学生たちが主人公の『건축학개론(コンチュカッケロン)(建築学概論)』(2012年)、さらに70代の女性が20歳のルックスに変身して青春時代を取り戻そうとする『수상한 그녀(スサンハン クニョ)(怪しい彼女)』(2014年)と、ノスタルジックな雰囲気を持つ作品が人気を呼んだ。

韓国史における重大事件の映画化

続いて目立つようになったのが、歴史的な出来事の映画化だ。

임진왜란(イムジヌェラン)정유재란(チョンユジェラン)(文禄・慶長の役)で活躍した英雄이순신(イスンシン)(李舜臣)を主人公としたアクション大作『명량(ミョンニャン)(バトル・オーシャン海上決戦)』(2014年)は全人口の1/3以上に当たる観客数を集め、歴代1位の記録を塗り替えた。

また、2015年の『암살(アムサル)(暗殺)』のヒットをきっかけに「日本の植民地時代を取り上げた作品は当たらない」という通説が覆され、2016年の『밀정(ミルチョン)(密偵)』『아가씨(アガシ)( お嬢さん)』『동주(トンジュ)(空と風と星の詩人~尹東柱の生涯~)』、2017年の『박열(パクヨル)(金子文子と朴烈)』など、続々と作られるようになった。

さらに1950年代から1980年代にかけての歴史を一人の男の生涯に凝縮したヒューマンドラマ『국제시장(ククチェシジャン)(国際市場で逢いましょう)』(2014年)、光州民主化抗争を外国人記者の視点から振り返った『택시운전사(テクシウンジョンサ)(タクシー運転手 約束は海を越えて)』(2017 年)、노무현(ノムヒョン)(盧武鉉)元大統領の弁護士時代の逸話をベースにした『변호인(ビョノイン)( 弁護人)』(2013年)、1987年の民主化闘争を複数の人物の視点から描いた『1987(イルグパルチル)(1987、ある闘いの真実)』(2017年)、IMF(国際通貨基金)事態の裏側に迫った『국가부도의 날(クッカブドエ ナル)(国家が破産する日)』(2018年)と、映画を見ているだけで激動の現代史をたどれるような作品が途切れることなく生み出されている。

巨悪に立ち向かう正義を描いた作品

가진 자(カジン ジャ)(持てる者)」と「가지지 못한 자(カジジ モタン ジャ)(持たざる者)」との格差が世界的に広がる中、2015年には圧倒的な力を持つ財閥の御曹司に立ち向かっていく無鉄砲な刑事を主人公とする『베테랑(ベテラン)(ベテラン)』が大ヒット。

同じ年には政界、財界、マスコミの癒着や「巨悪」に挑戦する側の野心が赤裸々に描かれた『내부자들(ネブジャドゥル)(インサイダーズ/内部者たち)』も作られた。

また、2017年の『더 킹(ト キン)(ザ・キング)』は大韓民国を動かしてきた検察の裏側を정우성(チョンウソン)조인성(チョインソン)というスターの共演で見せる映画だった。

新ジャンルの作品が次々と登場

これまでになかったジャンルの作品が登場したのも2010年代の特徴。

疾走するKTXの中でゾンビから逃れようとする人々の姿が現実世界と重なった『부산행(プサネン)(新感染ファイナル・エクスプレス)』(2016年)や、前後編を同時に撮影し、CGを駆使したダイナミックな映像が印象的だった『신과함께(シングァハムケ)죄와 벌(チェワ ボル)(神と共に第一章:罪と罰)』(2017年)、『신과함께(シングァハムケ)인과 연(イングァ ヨン)(神と共に第二章:因と縁)』(2018年)は、韓国映画のスケールがいかに大きくなったかを実感させた。

根強い人気を誇るコメディー映画にも、麻薬捜査班の刑事たちがチキン屋を営む『극한직업(クカンジゴプ)(エクストリーム・ジョブ)』(2019年)やノンストップアクションの中に笑いを詰め込んだ『엑시트(エクシトゥ)(EXIT)』(2019年)といった新しいタイプの作品が登場している。

新しい時代の幕開け

다이빙벨
『다이빙벨』

一方、映画界における2010年代最大のニュースとも言えるのが、세월호(セウォロ)(セウォル号)事件発生当時の現場の混乱にカメラを向けたドキュメンタリー『다이빙벨(タイビンベル)(ダイビング・ベル セウォル号の真実)』(2014年)の上映に端を発した釜山国際映画祭への政治的な圧力問題だろう。

문재인(ムンジェイン)(文在寅)政権誕生後、映画祭は従来の形に戻りつつあったが、執行委員長が検察に告発されて辞任し、国からの支援金も大幅に削減された。その痛手は今なお完全には癒えていない。

기생충
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韓国映画誕生100年に当たる2019年は、世界最高峰として知られるカンヌ国際映画祭で봉준호(ポンジュノ)監督の『기생충(キセンチュン)(パラサイト半地下の家)』が韓国映画として初めて最高賞のパルムドールを受賞。韓国映画の「次の100年」の幕開けにふさわしい、記念すべき年となった。 

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韓国語学習ジャーナルhana Vol. 34「韓国の2010年代を振り返る!」
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