서울(ソウル)から地下鉄1号線に乗る。北へ1時間ほど行けば의정부(議政府)。부대찌개(ソーセージ入りキムチ鍋)の本場として知られる。
あるいは、南に進路を取って수원(水原)に向かえば、立派な수원갈비(水原式の牛カルビ焼き)が待っている。
西へ向って인천(仁川)に行き、韓国最大の中華街で짜장면(韓国式のジャージャー麺)を食べてもよい。
地下鉄1号線はソウルを起点とした、最も気軽な地方グルメ旅への入り口である。
ソウルから日帰り! 仁川ショートトリップ
そんなショートトリップの提案として、仁川の少し手前の부평(富平)駅で降りるプランを紹介しよう。
この町はソウルからも通勤圏で、住宅街としての側面も持つが、住所としては仁川市内に含まれ、港町の雰囲気もしっかりある。
富平駅から10分も歩けば、부평해물탕거리(富平海鮮鍋通り)に到着。両側に해물탕(海鮮鍋)の専門店ばかりがずらりと並ぶさまは壮観だ。
数えるのも大変な魚介の種類
数ある専門店の中から、地元の人おすすめの「동해해물탕(東海ヘムルタン)」という店に入った。運ばれてきた大鍋には、みっちりと新鮮な魚介が詰まっている。
季節によって少しずつ顔触れは変わるというが、その日の具材は全部で15種類。
せっかくなので一つひとつ尋ねてみると、낙지(タコ)、새우(エビ)、오징어(イカ)、꽃게(ワタリガニ)、소라(サザエ)、대합(ハマグリ)、홍합(ムール貝)、키조개(タイラギ)、모시조개(オキシジミ)、위소라(巻き貝の一種)、고니(スケトウダラの白子)、명란(スケトウダラの卵)、오징어알(イカの卵)、미더덕(エボヤ)、만득이(シロボヤ)というラインアップであった。
港町ならではのぜいたくな味わい
あまりの量なので、店の人も一つひとつ思い出しながら数えるといった状況で、その隙を狙ったのか、生きたまま入れられたタコがうねうねと鍋の外に逃亡を図ろうとしていた。残酷ではあるがしっかりとふたをし、逃げられないようにした上で熱を通す。
港に近い富平だけあって、さすがに新鮮であり、種類も多いので、一つひとつを食べ比べる楽しさがあった。
中でも、肉厚な貝類が印象的である。中盤から終盤にかけては、出汁の溶け出たスープを飲むのがまた最高。
さながら西の海を丸ごと楽しむかのようにぜいたくな味わいであった。
(写真提供:八田靖史)
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