전주(全州)出身の友人に、地元に帰って食べたくなるものは何かと尋ねてみた。
全州といえば、韓国でも食の豊かな町として名高く、비빔밥(ビビンバ)や콩나물국밥(大豆モヤシのクッパ)、한정식(韓定食)といった料理は観光客にも有名だが、意外なことに友人からは「베테랑(ベテラン)」の칼국수(韓国うどん)という答えが返ってきた。
なるほど、ビビンバ、大豆モヤシのクッパ、韓定食といった料理は確かに全州を象徴するものだが、それは日本人が東京に住んでいて、江戸前ずしやもんじゃ焼きをそう頻繁に食べないのと同じ。
むしろお気に入りのラーメンを食べるような感覚で、韓国うどんが食べたくなるのかもしれない。
一味違う「ベテラン」の韓国うどん、その魅力とは
この「ベテラン」という店。有名観光地の한옥마을(韓屋村)にあって観光客も訪れるが、増築に増築を重ねた店内は、むしろ地元で愛されて約半世紀(1976年創業)という雰囲気を全面に醸し出している。
初めて全州に行って、まず食べるべき料理とまでは言わないが、何度か足を運ぶうちに口コミを聞いて、自然と足が向くようなタイプの店だ。
「ベテラン」の韓国うどんは、一般的な韓国うどんのスタイルとは少し異なる。「ベテラン」の韓国うどんを食べてまず驚くのは、香ばしさあふれるスープ。煮干しで取った出汁に、たっぷりの들깨(エゴマの粉)を振り掛けてあるのだが、粉だけでなく実も加えているので、プチッとした食感を楽しめる。
また、最後に溶き卵を加えているため、口当たりがとろとろとやわらかく、これがまた麺のすすり心地を滑らかにする。
麺はちょっと太めの冷や麦ほどなので、卵とじのようなスープと一体になり、口の中にとぅるとぅる流れ込むのがなんともいえない快感だ。
ぜひ試してほしい手作りギョーザ
この韓国うどんは1人前でも結構なボリュームだが、もし大勢で行って余裕があるなら、皮から手作りをする만두(ギョーザ)も試してみてほしい。ころんと小さく、皮も薄いので、おなかがいっぱいでもひょいひょい食べられる。
こうしたローカルフードは、たいていどの地域にもある。土地を代表する名物を一通り制覇したら、地元の人とも知り合いになって、こうした店を探してみるのも楽しい。その土地がよりいっそう身近に感じられるはずだ。
(写真提供:八田靖史)
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定価:1518円(本体1380円+税10%)