육회비빔밥

ひと味違った見どころと食べ物を紹介!慶尚南道の観光地&地方料理

경상도(キョンサンド)(慶尚道)は韓国の中でも歴史的な見どころに富む地域で、味わえるグルメも、歴史的な逸話と共に楽しめるものがいっぱい!食を通じて歴史にも触れられる地域です。

地理的に見ると、内陸部は태백산맥(テベクサンメク)(太白山脈)、소맥산맥(ソメクサンメク)(小白山脈)が南北に伸びて山の幸が潤沢であり、高原地域では果物栽培や畜産業も盛んです。

海岸部には、포항(ポハン)(浦項)、통영(トンヨン)(統営)、거제(コジェ)(巨済)といった港町が点在し、新鮮魚介を味わえます。한우(ハヌ)(韓牛)、송이버섯(ソンイボソッ)(マツタケ)、대게(テゲ)(ズワイガニ)など、極上の高級食材がそろうのも慶尚道ならではです。

今回は경상남도(キョンサンナムド)(慶尚南道)の観光地とグルメを見ていきましょう。

창원(昌原)の見どころとご当地グルメ

복국
복국(フグのスープ)

慶尚南道の道庁所在地は창원(チャンウォン)(昌原)です。2010年に隣接する마산(マサン)(馬山)、진해(チネ)(鎮海)の2市と合併し、人口100万人を超える大都市になりました。

慶尚南道における政治、経済の中心でありつつも、南海に面して漁港の風情も残す地域です。

창원(昌原)

合併前からの旧昌原は、석쇠불고기(ソクセブルゴギ)(網焼きプルコギ)と、소고기국밥(ソゴギグクパブ)(牛肉のクッパ)が名物。

1970年代に南海高速道路の建設時、現場で働く人たちが一日の疲れを癒やすために、牛肉を食べて英気を養ったのが始まりだそうです。網焼きプルコギで焼酎を飲み、牛肉のクッパで締めて帰るのが定番とか。

フグ料理通りの看板
フグ料理通りの看板

마산(馬山)

港町の馬山は아구(アグ)(アンコウ)と복어(ポゴ)(フグ)が有名。市内の오동동(オドンドン)(午東洞)にはそれぞれの専門店が集まって名物通りを構成しています。

아구は(チム)(蒸し煮)や(タン)(鍋料理)が一般的で、近年は生のアンコウをぶつ切りにして使うことが多いものの、伝統的には乾燥させたものを用います。食感はやや硬くなりますが、かむごとにじわじわとにじみ出るうま味はなかなかの珍味です。

복어は복국(ポックク)(フグのスープ)がおすすめ。참복(チャムボク)(トラフグ、자주복(チャジュボク)とも)は値段も高くなりますが、은복(ウンボク)(シロサバフグ)、밀복(ミルボク)(クロサバフグ)であれば、ぐっと庶民的です。

たっぷりのセリを入れた澄まし仕立てで、ガツンとニンニクも効かせて。朝食としてもぴったりです。

진해(鎮海)

鎮海はタラ。명태(ミョンテ)(スケトウダラ)ではなく、대구(テグ)(マダラ)が有名です。

真冬に旬を迎えるマダラは体格が立派なので、1匹を(フェ)(刺し身)、(チョン)(チヂミ)、(タン)(スープ)、뽈찜(ポルチム)(頭の蒸し煮)と多彩な調理法で味わえます。

足の早い魚なので、刺し身として食べられるのはまさしく産地ならではの特権。

12~1月の一番寒い季節をめがけて鎮海へ、と言いたいところですが、桜祭りでも有名なので春も捨てがたいところです。

거제(巨済)の見どころとご当地グルメ

ホヤの刺し身
ホヤの刺し身

韓国の島としては、제주도(チェジュド)(済州島)に次いで、2番目に大きい거제도(コジェド)(巨済島)。この巨済島を中心に、周辺の離島を含んで巨済市が構成されています。

南海に浮かぶ島しょ地域とあって、漁業、養殖業も盛んですが、それ以上に巨済を象徴するのは造船業です。삼성중공업(サムソンジュンゴンオプ)(サムスン重工業)、대우조선해양(テウジョソネヤン)(テウ造船海洋)といった大企業が、長きにわたって韓国経済を支えてきました。

かつては船で行くか、統営を経由して大回りをするかでないと行けませんでしたが、2010年に부산(プサン)(釜山)の가덕도(カドクト)(加徳島)と거가대교(コガデギョ)(巨加大橋)で結ばれ、観光客にとってもずいぶんアクセスが良くなりました。

風光明媚(めいび)な自然が何よりの自慢で、中でも해금강(ヘグムガン)(海金剛)と呼ばれる奇岩怪石の連なる一帯や、島全体が植物園となっている외도(ウェド)(外島)が有名です。

ドラマ「겨울연가(キョウルリョンガ)(冬のソナタ)」で最終回に登場した、「不可能な家」がある場所といえば、初期からの韓流ファンには有名かもしれません。

멍게비빔밥
멍게비빔밥(ホヤのビビンバ)

そんな巨済を代表する食材といえば、初夏から夏にかけて旬を迎える멍게(モンゲ)(ホヤ)。隣接する統営と並び、一大生産地として知られています。

好き嫌いの分かれる食材ではありますが、鮮度の良いものは香りも良く甘味もあって、「ホヤとはこういうものであったか!」と目からうろこが落ちる味わいです。

刺し身や、젓갈(チョッカル)(塩辛)としての利用が多いですが、専門店では멍게비빔밥(モンゲビビムバブ)(ホヤのビビンバ)も特筆したい逸品です。

生のまま刻んで鮮烈な香りを楽しむもよし、いったん塩辛にしてうま味を引き出してもよし。

貝や海藻などを加えて重層的な味わいにしたものもあり、ひと口にホヤのビビンバと言っても意外に奥の深い料理です。

진주(晋州)の見どころとご当地グルメ

육회비빔밥
육회비빔밥(ユッケビビンバ)

1896年に慶尚道が南北に分かれ、慶尚南道が誕生した時、道首府となったのが진주(チンジュ)(晋州)でした。

朝鮮王朝時代から交通の要衝、国防の要衝として栄えた晋州には、現在も市の中心部に진주성(チンジュソン)(晋州城)が残されています。

もともとは高麗時代に南海から侵入する外敵への備えとして建設されたものですが、この地で行われた戦闘としては、임진왜란(イムジヌェラン)(文禄・慶長の役)における晋州城の戦いが最も有名でしょう。

現在の晋州城には国立博物館が併設され、公園としての機能もありますが、文禄・慶長の役と関わる見どころも多く残されています。

第一次攻防戦で朝鮮軍を指揮した김시민(キムシミン)(金時敏)将軍の像や、日本側の大将を道連れにして川に飛び込んだ논개(ノンゲ)(論介)という기생(キセン)(妓生)の祠堂(しどう)、そしてその現場とされる義岩がその代表格。

また、毎年10月ごろには유등(ユドゥン)(流灯)という灯籠流しの祭りが行われますが、これも元をたどると、文禄・慶長の役の時に通信手段として使われたことに由来するとされています。

晋州の名物料理というと、육회비빔밥(ユクェビビムパブ)(ユッケビビンバ)が有名ですが、これも説によっては文禄・慶長の役のときに簡便な戦闘糧食として生まれたとも語られます。

一般的には同じく晋州名物である냉면(ネンミョン)(冷麺)と共に、妓生らによって作られた宴会食との説が有力ですが、そういった説が出るのも、晋州の歴史を象徴しているのかもしれません。

晋州のユッケビビンバには、화반(ファバン)(花飯)、칠보화반(チルボファバン)(七宝花飯)といった別称もあり、真っ赤な육회(ユクェ)(ユッケ)は器に咲いた花と見立てます。

七宝は基本とする7種類の具材を意味しますが、各種の나물(ナムル)を中心としつつ、香りの要素として欠かせないのが쏙대기(ソクテギ)(岩のり)。

主役のユッケを下支えしつつ、味と香りに膨らみを持たせて仕上げるのが、韓国料理の神髄である融合の妙と言えましょう。

창녕(昌寧)の見どころとご当地グルメ

송이닭국
송이닭국(マツタケと鶏の鍋)

朝鮮半島の東側を南北に貫く太白山脈と、途中で分かれて南西に伸びる小白山脈。その先端部分に慶尚南道は位置します。

主要な都市が南部に多く、海沿いの印象も強い慶尚南道ですが、内陸部に目を向けると山々に囲まれた地域もたくさんあります。

慶尚南道の北中部に位置する창녕(チャンニョン)(昌寧)も、화왕산(ファワンサン)(火旺山)郡立公園や、ラムサール条約の登録湿地である우포늪(ウポヌプ)(牛浦沼)で知られる自然豊かな地域。

約70万坪(約230万平方メートル)という広大な面積を誇る牛浦沼は、韓国最大の湿地であり、希少な鳥類、魚類、植物などを多く観察できるスポットとして多くの観光客を集めています。

生マツタケをごま油で食べるところ
生マツタケをごま油で

火旺山の方は登山客に人気である一方、マツタケの名産地という側面もあります。9月下旬から10月中旬までのわずかな期間ではありますが、希少なマツタケを求めて、この地域を訪れる人は多いです。

一般的な食べ方としては、やはり송이구이(ソンイグイ)(焼きマツタケ)ですが、仕上げにごま油をたらすというのがなんとも韓国的。

マツタケの香りが飛んでしまうじゃないか!と思いがちですが、実際に食べてみると鮮度の良いマツタケは決して負けません。

あるいは生のマツタケをスライスして、刺し身のように塩とごま油のタレにつけて食べたりもしますので、韓国的には定番の組み合わせと言えましょう。

また、鍋料理にも多く利用されますが、ぜひ昌寧で食べてほしいのが송이닭국(ソンイダックク)(マツタケと鶏の鍋)。

ぶつ切りにした토종닭(トジョンダク)(地鶏)とマツタケを鍋で煮込み、塩で味を整えるだけのシンプルな料理ですが、これがなんとも絶品なんです。

マツタケ、地鶏が具としておいしいのはもちろん、いいだしが出るという点でも大変優秀。主役二人が共同作業で作るスープを飲むための料理と言っても過言ではないでしょう。

통영(統営)の見どころとご当地グルメ

굴구이
굴구이(カキの蒸し焼き)

かつて、この統営という町は、충무(チュンム)(忠武)と呼ばれていました。忠武とは朝鮮王朝時代の名将、충무공(チュンムゴン)(忠武公)こと、이순신(イスンシン)(李舜臣)将軍の諡号(しごう)にちなんだものです。

そしてまた現在の統営という地名も、李舜臣将軍が文禄・慶長の役に当たり、水軍の指揮を行う통제영(トンジェヨン)(統制営)を置いたことが由来となりました。

市内には、李舜臣将軍を祭った충렬사(チュンニョルサ)(忠烈祠)や、戦功を記念して建てられた客舎の세병관(セビョングァン)(洗兵館、国宝305号に指定される)など、将軍ゆかりの歴史的なスポットが数多く残されています。

将軍によって統制営が置かれた한산도(ハンサンド)(閑山島)もその一つですが、この島は現在、전라남도(チョルラナムド)(全羅南道)の여수(ヨス)(麗水)までを結ぶ、한려해상국립공원(ハルリョヘサングンニプコンウォン)(閑麗海上国立公園)の一端としてもよく知られています。

南海の多島海を中心に構成されるこの一帯は、韓国初の海上国立公園であり、その風光明媚な環境は大切に守られてきました。観光の面でも重要な地域ですが、漁業や養殖業にとっても清浄な海は大きな財産です。

そんな統営の名産品といえば、まず何よりも(クル)(カキ)。市内には韓国で唯一、カキだけを扱う専門の漁協があります。韓国で流通するカキの約8割がここから出荷され、その一部は日本へも輸出されています。

市内の専門店ではシーズンが始まる11月ごろになると、ぷっくりとした肉厚なカキを、コース形式にして提供。

생굴(セングル)(生ガキ)、굴무침(クルムチム)(カキの和え物)から始まって、굴전(クルジョン)(カキのチヂミ)、굴탕수육(クルタンスユク)(カキの酢豚風)、굴구이(クルグイ)(カキの蒸し焼き)、굴밥(クルバプ)(カキご飯)まで、いったい何個のカキを食べたのか到底数え切れないほどのボリュームです。

その他、昔の地名を冠した충무김밥(チュンムギムバプ)(副菜を添えた具なしののり巻き)、꿀빵(クルパン)(蜜入りのあんドーナツ)もおすすめです。

(写真提供:八田靖史)

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