韓国各地の知られていない絶品鍋料理を巡る旅。今回は、제주도(済州道)のご当地鍋を紹介する。
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済州道ってどんなとこ?
韓国の南部に位置する島しょ地域。正式名称は済州特別自治道である。
主要島である済州島を含む9の有人島と、55の無人島で構成される。
島の中央部には韓国一を誇る標高1947mの한라산(漢拏山)がそびえ、この山を中心とした火山活動によって、島内には数多くの溶岩洞窟や噴火口跡が点在する。
本土から離れた位置にあって、かつては탐라(耽羅)という独立した王国であり、独自の建国神話や文化を有していたが、三国時代以降は朝貢関係を結び、朝鮮王朝時代に入って完全に併合された。
代表的な観光地としては、島内の各地に海水浴場があるほか、かつての噴火口跡である성산일출봉(城山日出峰)や、建国神話にまつわる삼성혈(三姓穴)などがある。
南部の중문(中文)地区はリゾート地としてホテルやゴルフ場が多い。
朝鮮半島の南に浮かぶ済州島では、古くから해녀(海女)が活躍し、전복(アワビ)、오분자기(トコブシ)、소라(サザエ)、성게(ウニ)といった海産物を特産品とした。
初めて済州道を訪れるなら絶対に試してほしい!
そんな済州道の鍋料理というと、まずは해물뚝배기(海鮮みそチゲ)。アワビ、ウニ、딱새우(ミナミアカザエビ)、바지락(アサリ)など、魚介をふんだんに用いた된장찌개(みそチゲ)である。
アワビだけでも何個も入るというぜいたくさで、食べても食べても次から次へと具が顔を出す。
島だけあって鮮度は申し分なく、そのうま味が溶け出たスープも磯の風味全開。初めての済州道であれば、まずはこの料理をマストとして食べるのが望ましい。
済州道を代表する特産物の鮮度は極上品
고등어(サバ)や갈치(タチウオ)といった大衆魚の鮮度に驚くのも済州道ならでは。どちらも足の早い魚だが、島を代表する特産品故に、水揚げしてすぐを刺し身で味わうことができる。
そもそもの素材が良いので、焼き魚、煮付けにしても逸品。中でもタチウオを、若い白菜、カボチャと澄まし仕立てのスープに仕上げた갈치국(タチウオのスープ)のうまさは産地以外では考えられない極上品だ。
あるいは同系統のスープとして、각재기(アジ、標準語では전갱이)、멜(カタクチイワシ、標準語では멸치)を若い白菜と煮込むこともある。
각재기국(アジのスープ)、멜국(カタクチイワシのスープ)共に、鮮度の良さを背景として、青魚特有の風味をうまく生かしている。青魚好きにはぜひおすすめしたい料理だ。
海鮮だけじゃない! 済州道の人にとって特別な豚肉料理
また、済州道の食文化を語る上で、新鮮魚介と同じぐらい重要なのが돼지(豚)の存在である。かつての済州道では各家庭で豚を飼い、特別な日に周囲の人と分け合って食べた。
身の良い所は焼き肉、ゆで豚にし、内臓や足先なども余す所なく味わう。骨や余った肉はスープにするのだが、そこに別の特産品を加えるあたりが済州道らしい。
돼지고기(豚肉)と고사리(ワラビ)をとろとろになるまで煮込んだ고사리육개장(豚肉とワラビのスープ)や、海藻の몸(ホンダワラ、標準語では모자반)と煮込んだ몸국(ホンダワラのスープ)など。
これらは近年、昔ながらの郷土料理として見直されており、豚焼き肉店などでも食事メニューとして出すところが増えている。
鶏肉も外せない! 済州道のローカル料理
最後は済州道の中のローカル料理として、조천읍 교래리(朝天邑橋来里)の닭백숙샤브샤브(ゆで鶏しゃぶしゃぶ)を紹介したい。
この地域には토종닭(地鶏)料理を得意とする店が集まっており、닭백숙(ゆで鶏)を注文すると、まず胸肉のスライスがしゃぶしゃぶの具材として出てくる。
客の待ち時間を減らす意図から始まったそうだが、しゃぶしゃぶを楽しんでいるうちに、胸肉を除いた丸鶏がゆで上がってくるという流れに、鶏1羽で2度おいしいとのお得感がある。
こうした島の中のローカル料理というのも実は豊富であり、この済州島と本格的に向き合おうと思うと想像以上に広く、奥が深い。訪れるほどに楽しみの増える島なので、ぜひ通い詰めてほしい。
(写真提供:八田靖史)
この記事が掲載されている書籍
「韓国人と鍋」
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