教保文庫の2025年3月の月間ベスト10と注目の新刊情報(韓国小説)をご紹介します。
2月末に発売されたばかりのペク・スリンの新刊が10位にランクインしました。
注目の新刊では大人気のファンタジー小説の最新刊や、注目の若手作家ソン・ヘナの小説集をとりあげています。
記事の目次
1位:『모순(矛盾)』(ハードカバー)
양귀자(梁貴子)著/쓰다(スダ)刊/2013.4.1

양귀자
1998年初版が刊行された後、長い間愛されてきた作品をハードカバーとして新しく出版。主人公の女性と、極端に性格の違う母親と叔母の人生を眺めながら、矛盾だらけのこの人生をどう理解すればいいのかを見つめ直すストーリー。
2位:『소년이 온다(少年が来る)』
한강(ハン・ガン)著/창비(チャンビ)刊/2014.5.19

한강
光州事件の綿密な取材に基づく長編小説。邦訳書『少年が来る』(井手俊作訳/クオン)が出版されています。
3位:『급류(急流)』
정대건(チョン・デゴン)著/민음사(民音社)刊/2022.12.22

정대건
7歳の時に互いの父母が不倫の末に海の事故で亡くなるという悲劇に見舞われて別れを余儀なくされた元恋人同士の2人が、大人になって再会し、過去の痛みを抱えながらも再び距離を縮めていく痛くて切ない恋愛小説。
4位:『채식주의자(菜食主義者)』
한강(ハン・ガン)著/창비(チャンビ)刊/2022.3.28

한강
マン・ブッカー国際賞を受賞した『菜食主義者』(きむふな訳/クオン)は、ある日突然肉を拒否し始めた平凡な女性・ヨンヘを中心に、彼女の変化に戸惑う夫、芸術的・性的に執着する義兄、そして混乱の中で進もうとする姉・インへの視点から描かれる連作小説です。
5位:『작별하지 않는다(別れを告げない)』
한강(ハン・ガン)著/문학동네(文学トンネ)刊/2021.9.9

한강
2025年2月末時点での最新刊で、済州4・3事件を題材にした長編小説です。邦訳書『別れを告げない』(斎藤真理子訳/白水社)が出版されています。
6位:『홍학의 자리(紅鶴の場所)』
정해연(チョン・へヨン)著/엘릭시르(エリクシル)刊/2021.7.26

정해연
女子生徒ダヒョンと不適切な関係を持つ教師チュヌは、ある夜教室で行為中に警備員の足音を聞き、先に職員室へ戻る。するとダヒョンの携帯の音が聞こえ、教室へ戻ると彼女が裸のまま首を吊っていた。足元には踏み台もなく、他殺を確信するが、関係が発覚するのを恐れ通報できずにいる――一体誰が、なぜ彼女を殺したのか。
7位:『나는 소망한다 내게 금지된 것을(私は望む 私に禁じられたことを)』
양귀자(梁貴子)著/쓰다(スダ)刊/2019.4.20

양귀자
若い女性が人気男優を拉致して監禁して操る小説です。破格的なストーリーと主人公カン・ミンジュの大胆な歩みは、同時代を生きる人たちの苦しい人生を憐憫と細心さで包み込みます。
8位:『구의 증명(クの証明)』
최진영(チェ・ジニョン)著/은행나무(銀杏ナム)刊/2023.4.26

최진영
愛する恋人の突然の死後、喪失と哀悼の過程を通じて、人生と死の意味を問い直す小説です。
9位:『그 개와 혁명 제 48회 이상문학상 작품집 2025년(その犬と革命/2025年 第48回李箱文学賞作品集)』
예소연(イェ・ソヨン)、김기태(キム・ギテ)、문지혁(ムン・ジヒョク)、서장원(ソ・ジャンウォン)、정기현(チョン・ギヒョン)、최민우(チェ・ミヌ)著/다산책방(タサンチェッパン)刊/2025.2.18

예소연他
李箱文学賞大賞を受賞した『その犬と革命』はは、長い間父親の看病をしてきた主人公のスミンが亡くなった父親のために革命的な葬儀を企画するストーリーを軽いタッチで描いた作品。他、作者であるイェ・ソヨンの受賞コメントや自叙伝、自薦の他作品に加え、優秀賞の5作品や審査評などが収録されています。
10位:『봄밤의 모든 것(春の夜のすべて)』
백수린(ペク・スリン)著/문학과지성사(文学と知性社)/2025.02.28刊

백수린
『惨憺たる光』『静かな事件』『夏のヴィラ』で知られる著者による新作短編集。疎遠だった娘婿から託されたオウムをきっかけに、70代女性が過去を回想する「うららかな日々」など全7編を収録。空虚な日々に変化が訪れる瞬間を温かく描いています。
注目の新刊
『봄밤의 모든 것(春の夜のすべて)』
백수린(ペク・スリン)著/문학과지성사(文学と知性社)/2025.02.28刊

백수린
『惨憺たる光』(カン・バンファ訳/書肆侃侃房/2019)『静かな事件』(李聖和訳/クオン/2019)、『夏のヴィラ』(カン・バンファ訳/書肆侃侃房/2022)で知られる著者の新作短編集です。娘とも疎遠になり一人寂しく暮らしていた70代の女性オンミが娘婿からオウムを託され、不慣れな飼育をすることで自身の子育て期を回想していく「うららかな日々」の他、6編の物語が収められています。作家は「冬の真っ只中にあっても春は来ると信じることはできるという気持ちでこれらの小説を書いた」と語っており、空虚な日々を過ごしていた人々がふとしたきっかけで変わっていく姿が描かれています。
『소설 보다:봄2025(小説ポダ:春2025)』
강보라(カン・ボラ)、성해나(ソン・ヘナ)、윤단(ユン・ダン)著/문학과지성사(文学と知性社)/2025.03.14刊

강보라他
同社が年4回「この季節の小説」を選定し刊行しているシリーズです。2025年春号にはカン・ボラの「バウアーの庭園」、ソン・ヘナの「スムーズ」、ユン・ダンの「残りの夏」の3編と作家のインタビューが収められています。
『혼모노(本物)』
성해나(ソン・ヘナ)著/창비(チャンビ)/2025.3.28刊

성해나
数々の文学賞を受賞し、読者からの人気も高い注目の若手作家ソン・ヘナの小説集で、若い作家賞を受賞した「ギルティクラブ」など7編の小説が収録されています。李孝石(イヒョソク)文学賞を受賞した表題作「本物」は、ホンモノと名乗って他人になりすました正体不明の人物が起こす連続事件を、主人公の人気作家が解き明かそうとするミステリー小説です。
『오백 년째 열다섯 4 : 구슬의 미래(五百年目の十五歳 4:狐玉の未来)』

성해나
김혜정(キム・ヘジョン)著/위즈덤하우스(ウィズダムハウス)/2025.4.9刊
古朝鮮の建国神話と昔話に由来する野狐(ヤホ)族と虎(ホラン)族が人間界にまぎれて生きる、青少年向けの大人気ファンタジー小説の最新刊です。日本語で読める著者の作品に『ファンタスティックガール』(清水知佐子訳/小学館/2002)があります。
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