서울(ソウル)の東南にあり、気軽に訪れてハイキングが楽しめる場所としても知られている남한산성(南漢山城)。映画『남한산성(天命の城)』は、ユネスコ(国連教育科学文化機関)世界遺産にも指定されているこの山城を舞台にした時代劇だ。
危機にひんした国を憂う重臣たちの姿
인조(仁祖)が朝鮮王朝16代王の座にあった1636年12月。中国大陸で明を脅かすほど力を付けていた後金は国号を清と改め、朝鮮に対して君臣の関係を結ぶように迫っていた。
大軍に追い詰められた王と臣下たちは極寒の中、南漢山城に立てこもり、和睦か徹底抗戦かを巡って激しい議論を続けていた。
『도가니(トガニ 幼き瞳の告発)』(2011)、『수상한 그녀(怪しい彼女)』(2014)、そしてドラマ「오징어 게임(イカゲーム)」(2021)の成功で世界的な注目を集める存在となった황동혁(ファン・ドンヒョク)監督。ファン・ドンヒョク監督が『トガニ 幼き瞳の告発』『怪しい彼女』などのヒット作を手掛けた後、力のあるトップ俳優たちを迎えて作り上げたのが『天命の城』だ。
2007年に韓国で出版された김훈(金薫)のベストセラー小説を読んだ監督が「彼らが交わし合う言葉の深さと哲学に魅力を感じて」脚本を書き上げたと言っている通り、「重臣たちが王の前で持論をぶつけ合う」会話劇が中心となっている。
トップ俳優たちが見せる迫真の演技合戦
敵軍との交渉にたった一人で臨み、国を守るためには相手の要求を受け入れることも必要と主張する大臣최명길(チェ・ミョンギル)を演じているのは、日本でもおなじみの이병헌(イ・ビョンホン)。今回は得意のアクションを封印し、冷静沈着な態度で王を説得する。
一方、国の名誉を守るために戦うべしという熱い意見で彼と真っ向から対立する大臣김상헌(キム・サンホン)役には、『당신, 거기 있어줄래요(あなた、そこにいてくれますか)』(2016)の김윤석(キム・ユンソク)が扮している。
国の命運を懸けて二人が対立するシーンはワンテークで撮影されており、ファン・ドンヒョク監督もその迫力を「まるで目の前で演劇を見ているようだった」と語っている。
その他、優柔不断な王、仁祖を『덕혜옹주(ラスト・プリンセス 大韓帝国最後の皇女)』(2016)の박해일(パク・ヘイル)、本業は鍛冶屋ながら兵士としても活躍を見せる날쇠(ナルセ)をドラマ「옥중화(オクニョ 運命の女)」(2016)の고수(コ・ス)が演じている。
また、海外作品への参加も多い坂本龍一が音楽を担当している。
時を超えて投げ掛けられる問い
300年以上前に起きた歴史的な出来事を基にした映画ではあるが、「国家の代表者は国と人民を守るため、恥辱に耐えることができるのか?」という、現代にも通じる問いを投げ掛けているところが、とても興味深い。
また、2022年、韓国で話題を呼んだミステリー時代劇『올빼미(梟-フクロウ-)』では、今作に続く時代を生きる仁祖と、清での人質生活から帰国した世子1との葛藤が描かれている。合わせて見ると、より理解が深まるだろう。
- 소현세자(昭顕世子)。仁祖の長男 ↩︎
この映画が紹介されている書籍
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