韓国のドラマを見ていると、これでもか!というほど登場する財閥の御曹司。ドラマの場合は美男子で心も優しい(あるいはツンデレ体質)という設定が多いのだが、『베테랑(ベテラン)』に登場する財閥3世は正真正銘の悪いヤツ。
“ナッツリターン”で有名になった実在のご令嬢を思い出させる横暴な性格で、好き放題な言動を繰り返す。そんな彼に、無鉄砲だが情に厚く、最後まで諦めないベテラン刑事が対決を挑む。
大ヒットを受けてパート2も制作中
下請け会社の賃金の不払いに抗議するためシンジン物産本社を訪れたトラック運転手が、社内で投身自殺を図るという事件が発生。
一命を取り留めた男の家族から連絡を受けた広域捜査隊所属の刑事서도철(ソ・ドチョル)は、当日、彼と会っていた会長の孫조태오(チョ・テオ)が関与していると直感し、捜査を始める。
一方、テオの腹心최(チェ)常務は、警察、マスコミ、さらにはドチョルの妻にまで手を伸ばし、事件のもみ消しを図ろうとする。
警察、検察、暴力組織の癒着に迫った2010年の『부당거래(生き残るための3つの取引)』、各国のスパイたちの攻防をスリリングに追った2013年の『베를린(ベルリンファイル)』と、ビターなテーマとスリリングな展開が共存する映画を生み出してきた류승완(リュ・スンワン)監督。
今回は「多くの人々へ伝えたい話だったので、分かりやすく、面白くないといけない」ということで、コミカルなシーンも満載のシンプルで痛快な作品として完成。
韓国では1300万人を超える記録的な数の観客を集め、続編の制作も進行中。新たにドラマ「D.P.」シリーズの정해인(チョン・ヘイン)も合流する予定だ。
ヒット作に欠かせない俳優たちが集結
主人公ドチョルを演じるのは『국제시장(国際市場で逢いましょう)』(2014)に続き、今作も大ヒットとなった황정민(ファン・ジョンミン)。
彼とガチンコ勝負を繰り広げる“最悪の御曹司”テオを『소리도 없이(声もなく)』(2020)の유아인(ユ・アイン)が、一分の隙もない冷酷さで見せている。
その他、ドチョルをサポートするチーム長に『国際市場で逢いましょう』でも名コンビぶりを見せた오달수(オ・ダルス)、テオのために汚い仕事をするチェ常務に『공조2: 인터내셔날(コンフィデンシャル 国際共助捜査)』(2022)の유해진(ユ・ヘジン)と、ヒット作には欠かせない実力者たちがそろって出演している。
名ぜりふの数々も話題に
明洞を駆け抜けるカーチェイスや、リュ・スンワン監督らしく、切れ味の良いアクションシーンも楽しい。
テオの「어이가 엾네(あきれたね)」やドチョルの「우리가 돈이 없지 가오가 없어?(俺たちには金はないけどプライドはあるだろ?)」など、名ぜりふの数々もお聞き逃しなく。
この映画が紹介されている書籍
「好印象を与える韓国語」
定価:1518円(本体1380円+税10%)