南北のスパイを主人公にしたスケールの大きなアクションロマンス『쉬리(シュリ)』(1999)の登場によって、そのパワーを広く知らしめた韓国映画。
現在はサスペンスやアクションといったジャンルの作品が目立つが、当時、日本で真っ先に公開されたのはさまざまなラブストーリーだった。
今や、堂々たるベテラン俳優となった김하늘(キム・ハヌル)、유지태(ユ・ジテ)が主人公をみずみずしく演じていた『동감(リメンバー・ミー)』(2000)もそんな作品のうちの1本。
今回紹介する『동감(同感〜時が交差する初恋〜)』は、そんな懐かしの名作を新たなキャストたちを迎えてリメイクした、ノスタルジックな空気が流れる青春ストーリーだ。
別の時代を生きる大学生たちの意外な出会い
1999年の春。心から望む進路ではないと思いながらも大学の工学部機械工学科に通っていた김용(キム・ヨン)は、同じ学科の新入生서한솔(ソ・ハンソル)に一目ぼれ。
彼女が興味を持っているアマチュア無線を学ぼうと、友人김은성(キム・ウンソン)から無線機を借りて家に戻る。
やがて、無線機の向こうから聞こえてきた女性김무늬(キム・ムニ)の声に応えたヨンは、彼女が生きている時代が2022年だと知り驚く。
オリジナルとリメイクの違いは?
違う時代に同じ大学に通う大学生たちが古い無線機を介して言葉を交わすようになるという設定が新鮮だった『リメンバー・ミー』。2001年には『時の香り~リメンバー・ミー~』というタイトルで日本でもリメイクされている。
オリジナル版は1979年の女性と2000年の男性との物語だったが、『同感〜時が交差する初恋〜』では1999年の男性と22年の女性と、時代やキャラクター設定に細やかなアレンジが加えられている。
IMF経済危機の影響が色濃く残る1999年と、厳しい就職難の続く22年の間には20年以上の隔たりがあるが、「将来に対する不安」や「愛する人との関係をどう進めていくか」という共通の悩みを抱える二人が、少しずつ親しくなっていく過程を自然に描き出している。
時代を象徴する言葉にも注目
韓国語が分かる人にとっては、別の時代に生きているという事実が信じられない二人が「言葉」をきっかけに世代差を確信するという点もポイント。
ムニが思わず口にする「헐!(ええっ!)」「초딩(小学生)」という言葉の意味が理解できずに戸惑うヨンがチャーミングだ。
また、携帯電話とポケベルが混在していた1999年のヨンがムニから「無線でなく카톡(通信アプリ카카오톡〈カカオトーク〉の略)で連絡しよう」と持ち掛けられて驚く姿からは通信手段の変化も感じられる。
注目の若手俳優がそろって出演
恋愛下手な大学生ヨンをドラマ「괴물(怪物)」(2021)の여진구(ヨ・ジング)、無線機の向こうから彼の恋愛を応援するムニをドラマ「지금 우리 학교는(今、私たちの学校は…)」シリーズの조이현(チョ・イヒョン)が生き生きと演じている。
その他にも、ヨンの後輩ハンソル役に「어사와 조이(御史とジョイ)」の김혜윤(キム・へユン)、ムニの幼なじみ영지(ヨンジ)役に「달이 뜨는 강(王女ピョンガン 月が浮かぶ川)」(2021)の나인우(ナ・イヌ)、ヨンの親友ウンソン役に「슈룹(シュルプ)」(2022)の배인혁(ペ・イニョク)と、現在、活躍中の若手俳優がそろって出演しているのも見どころだ。
彼ら、彼女らの20年後も想像しながら、ヨンとムニの初恋の行方を見守ってみてほしい。