軍事政権下で学生を先頭に市民たちが立ち上がり、自分たちの権利を獲得するために闘った1980年代の韓国。
장준환(チャン・ジュヌァン)監督の『1987』は、映画『택시운전사(タクシー運転手〜約束は海を越えて)』(2017)で描かれた時代に続く1987年を舞台に、さまざまな立場で民主化運動に関わった人々の行動を追った歴史ドラマだ。
1987年を生きた人々の肖像
1987年1月14日、서울の남영동(南営洞)にある治安本部の対共分室で、取り調べを受けていたソウル大生の박종철(パク・チョンチョル)が死亡。
担当刑事たちはすぐに遺体を火葬しようとするが、不審に思ったソウル中央地方検察庁の公安部長がこれをストップし、この事実を新聞社にリークする。治安本部は事態を収めるため、記者会見を開くが……。
歴史的な事件を映画にする場合、「当時、起きていた全てを再現する」のは難しい。そのため、『タクシー運転手〜約束は海を越えて』のように「主人公が見て、体験した」出来事を中心に話を進めていくことが多い。
しかし、この作品はそういった手法を選ばず、検事→新聞記者→刑務官→大学生と、まるでリレーのバトンを渡すかのように中心人物が交代しながら「1987年のソウル」で起きたことを克明に語っていく。
主演級の俳優が次々登場
数多い人物たち(そのほとんどが実名で登場)を演じる俳優たちの豪華さも見どころだ。
記者会見で拷問の事実を隠し「탁치니까 억해서 죽었다(バンと机をたたいたら、おっと言って死んだ)」と言い放って市民の怒りに火を付けた治安本部の박(パク)所長に『남한산성(天命の城)』(2017)の김윤석(キム・ユンソク)、警察と対立する検察官に『아가씨(お嬢さん)』(2016)の하정우(ハ・ジョンウ)。
民主運動家たちをつなぐ刑務官に『タクシー運転手〜約束は海を越えて』の유해진(ユ・ヘジン)、彼のめいの大学生に『お嬢さん』の김태리(キム・テリ)が扮している他、강동원(カン・ドンウォン)や설경구(ソル・ギョング)といった主演級の俳優たちが、出番は少ないが重要な役柄で登場する。
映画と現実がシンクロ
民主化運動30周年に当たり、12月に大統領選挙も予定されていた2017年の公開を目標に製作が進められた今作。しかし、封切りを前に朴槿恵大統領の罷免が決定。
(映画の中で)民主化を求めて街へ出た30年前の人々の姿が、ろうそくデモに集まった現在の人々と重なって見えてくるという、予想もしなかった効果もあり、700万人以上の観客が劇場を訪れる大ヒット作となった。
この映画が紹介されている書籍
定価:1518円(本体1380円+税10%)