教保文庫の2025年2月の月間ベスト10と注目の新刊情報(韓国小説)をご紹介します。
ランキングでは長くベスト10にランクインしている『矛盾』に加え、1992年に初版が発行されたベストセラーの『나는 소망한다 내게 금지된 것을(私は望む 私に禁止されたことを)』が8位にランクインし、梁貴子(ヤン・グィジャ)作品に注目が高まっています。
また、2月に発表された第48回李箱文学賞では2021年にデビューした若手作家イェ・ソヨンの『그 개와 혁명(その犬と革命)』が大賞に選ばれました。注目の新刊で詳しく取り上げています。
※ランキング記事ではハングルのルビを省略します。
記事の目次
教保文庫ベストセラー月間ベスト10(韓国の小説)
1位:『소년이 온다(少年が来る)』
한강(ハン・ガン)著/창비(チャンビ)刊/2014.5.19

한강
光州事件の綿密な取材に基づく長編小説。邦訳書『少年が来る』(井手俊作訳/クオン)が出版されています。
2位:『채식주의자(菜食主義者)』
한강(ハン・ガン)著/창비(チャンビ)刊/2022.3.28

한강
マン・ブッカー国際賞受賞作。邦訳書『菜食主義者』(きむふな訳/クオン)が出版されています。
3位:『급류(急流)』
정대건(チョン・デゴン)著/민음사(民音社)刊/2022.12.22

정대건
7歳の時に互いの父母が不倫の末に海の事故で亡くなるという悲劇に見舞われて別れを余儀なくされた元恋人同士の2人が、大人になって再会し、過去の痛みを抱えながらも再び距離を縮めていく痛くて切ない恋愛小説。
4位:『모순(矛盾)』(ハードカバー)
양귀자(梁貴子)著/쓰다(スダ)刊/2013.4.1

양귀자
1998年初版が刊行された後、長い間愛されてきた作品をハードカバーとして新しく出版。主人公の女性と、極端に性格の違う母親と叔母の人生を眺めながら、矛盾だらけのこの人生をどう理解すればいいのかを見つめ直すストーリー。
5位:『작별하지 않는다(別れを告げない)』
한강(ハン・ガン)著/문학동네(文学トンネ)刊/2021.9.9

한강
2025年1月末時点での最新刊で、済州4・3事件を題材にした長編小説です。邦訳書『別れを告げない』(斎藤真理子訳/白水社)が出版されています。
6位:『흰(すべての、白いものたちの)』
한강(ハン・ガン)著/문학동네(文学トンネ)刊/2018.4.25

한강
詩的で軽やかな1冊。邦訳書『すべての、白いものたちの』(斎藤真理子訳/河出書房)は文庫版もあります。
7位:『구의 증명(クの証明)』
최진영(チェ・ジニョン)著/은행나무(銀杏ナム)刊/2023.4.26

최진영
愛する恋人の突然の死後、喪失と哀悼の過程を通じて、人生と死の意味を問い直す小説です。
8位:『나는 소망한다 내게 금지된 것을(私に禁じられたことを私は望む )』
양귀자(ヤン・グィジャ)著/쓰다(スダ)刊/2019.4.20

양귀자
若い女性が人気男優を拉致して監禁して操るこの小説です。破格的なストーリーと主人公カン・ミンジュの大胆な歩みは、同時代を生きる人たちの苦しい人生を憐憫と細心さで包み込みます。
9位:『너의 유토피아(あなたのユートピア)』
정보라(チョン・ボラ)著/래빗홀(ラビットホール)刊/2025.1.15

정보라
『呪いのウサギ』が国際的に話題となり、最も邦訳が待たれる作家の一人であるチョン・ボラによる2作目の小説集です。
10位:『희랍어 시간(ギリシャ語の時間)』
한강(ハン・ガン)著/문학동네(文学トンネ)刊/2011.11.10

한강
言葉を失った女性と視力を失っていく男性の物語。邦訳書『ギリシャ語の時間』(斎藤真理子訳/晶文社)があります。
注目の新刊
『그 개와 혁명 제 48회 이상문학상 작품집 2025년(その犬と革命/2025年 第48回李箱文学賞作品集)』
예소연(イェ・ソヨン)、김기태(キム・ギテ)、문지혁(ムン・ジヒョク)、서장원(ソ・ジャンウォン)、정기현(チョン・ギヒョン)、최민우(チェ・ミヌ)著/다산책방(タサンチェッパン)刊2025.2.18

예소연他
李箱文学賞大賞を受賞した『その犬と革命』の他、作者であるイェ・ソヨンの受賞コメントや自叙伝、自薦の他作品に加え、優秀賞の5作品や審査評などが収録されています。『その犬の革命』は、長い間父親の看病をしてきた主人公のスミンが亡くなった父親のために革命的な葬儀を企画するストーリーを軽いタッチで描いた作品で、作家は「異なる意見を持つ人たちが互いを理解していく過程を描きたかった」と語っています。
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