『기생충（パラサイト 半地下の家族）』（2019）で、世界中に名を知られるようになった봉준호（ポン・ジュノ）監督。これまでに発表した長編作品は7本とそれほど多くないが、1作ごとにさまざまなチャレンジを続けてきた。
『옥자（Okja/オクジャ）』は、そんな彼が韓国の監督として最も早い時期に配信プラットフォームNetflixと組んで完成させた作品として大きな注目を集めた。
スーパーピッグのオクジャをめぐる追走劇
韓国の山奥で少女미자（ミジャ）が祖父と一緒に育てていたスーパーピッグの옥자（オクジャ）。“彼女”は大企業ミランダ社が開催した育成コンテストに優勝し、ニューヨークへと送られることが決定。
ミジャは何とかそれを阻止しようとするが、結局、オクジャは連れていかれてしまう。
その後、オクジャを取り返そうとするミジャに動物愛護団体のメンバーたちが協力を持ち掛けたことから、一緒にアメリカへと渡ることになる。
ポン・ジュノ監督はデビュー作『플란다스의 개（ほえる犬は噛まない）』（2000）以来、現代社会に対する風刺とエンターテインメント性とが見事にブレンドされた見応えのある作品を発表してきた。
本作も巨大生物と少女との温かな交流（監督によれば「初めてのラブストーリー」）を描きつつ、「動物を殺して食べる」という行為の持つ残酷性についても考えさせる、ユニークな内容となっている。
CGで作られたオクジャとミジャとの強い絆
物語の中心にあるのは、聡明で愛情深い動物オクジャと、監督が「宮崎駿監督のアニメーション『未来少年コナン』（1978）の女の子バージョン」と評するほどエネルギーにあふれるミジャとの強い絆だ。
配信開始時に直接、話を伺った際には、「生身の人間とCGで作った生き物との共感と愛を見せないといけなかったので下手をすると『どうしてCGのキャラクターに感情移入しないといけないのか？』と、観客が途中で席を立ってしまうのではないかと怖かった。
幸い、『ライフ・オブ・パイ／トラと漂流した227日』（2012）も手がけたエリック・デ・ブールさんをスーパーバイザーとして迎えることができました」と語っていた。
また、ミジャ役の안서현（アン・ソヒョン）は「撮影現場にはオクジャの代わりに『人形』がいたんですが、最初にそれを見た時、ただの白い塊なんで、ちょっと困ってしまいました（笑）。部位別にいくつかあった人形の中で私が一番、触って、仲良くなったのは頭の部分です」と振り返っていた。
常連俳優とハリウッド俳優の共演
本作の制作当時はNetflixオリジナル映画の数がまだまだ少なく、『Okja/オクジャ』がお披露目となったカンヌ国際映画祭では、発表形式の是非について論議が起きた。
「映画は劇場で上映された後、インターネットのプラットフォームに移動する」ことが慣例とされてきた韓国でも大手シネコンチェーンが反発し、独立系の映画館だけでの公開となった。
それに対しポン・ジュノ監督はNetflixを選んだ理由を「100％、創作の自由が与えられるから」と説明していた。
このコラムでも紹介したNetflixオリジナル映画『전, 란（戦と乱）』が、今年の釜山国際映画祭のオープニングを飾ったことを考え合わせると隔世の感がある。
『설국열차（スノーピアサー）』（2013）に続いて組んだティルダ・スウィントンや『フェイブルマンズ』（2022）のポール・ダノらハリウッド俳優に加え、ポン・ジュノ作品では『ほえる犬は噛まない』以来、おなじみの변희봉（ピョン・ヒボン）、『パラサイト 半地下の家族』でも組んだ최우식（チェ・ウシク）といった俳優たちが出演。
また、『パラサイト 半地下の家族』の家政婦役が印象的だった이정은（イ・ジョンウン）がオクジャの声を担当している。
来年はハリウッド作品『ミッキー17』も公開されるポン・ジュノ監督。その前に本作も含め、これまでの歩みを改めて振り返ってみるのもよいかもしれない。
原題：옥자
Netflix映画『Okja/オクジャ』独占配信中
邦題：Okja/オクジャ
配信開始：（韓国＆日本）2017年6月28日
監督：ポン・ジュノ
出演：ティルダ・スウィントン、ポール・ダノ、アン・ソヒョン、ピョン・ヒボン
『Okja/オクジャ』予告編
