若い世代を対象にした大衆歌謡がどんどん洗練されてK-POPと呼ばれるようになり、国外にも広がっていった2000年代にあって、中高年を主なファン層としていたトロットも変化していきます。
この時期のトロット界を代表する歌手はなんといっても、1980年生まれの장윤정(チャン・ユンジョン)でしょう。
チャン・ユンジョン「어머나!(オモナ!)」
チャン・ユンジョンは99年にMBCの강변가요제(江辺歌謡祭)で大賞に輝きますが、すぐにはデビューの機会に恵まれませんでした。端役として俳優活動を続けたあと、ついに03年にトロット曲「어머나!(オモナ!)」を発表します。この曲は翌年大ヒットを記録し、歌謡番組でトロット曲として久しぶりの1位に輝きます。
ちなみに어머나は女性が驚いたときに出す言葉で、日本語の「あら、まあ」に当たる言葉。어머나 어머나と繰り返すこの曲は、多くの有名歌手に「自分のイメージに合わない」と拒否され、結果としてチャン・ユンジョンが歌うことになったという有名なエピソードがあります。
それまで中高年を主な対象としていたトロットですが、この曲でチャン・ユンジョンは世代を超えたファンを獲得します。その後も、05年の「짠짜라(チャンチャラ)」、06年の 「이따 이따요(後で、後でね)」、08年の「장윤정 트위스트(チャン・ユンジョン ツイスト)」とヒット曲を出し続け、歌謡界におけるトロットの領分を守るのに多大な役割を果たしました。
パク・サンチョル「무조건(無条件)」
박상철(パク・サンチョル)は05年の「무조건(無条件)」が大ヒット。
彼は93年にKBSの歌番組、전국노래자랑(全国歌自慢)の最優秀賞を受賞しますが、その後なかなか芽が出ない中、「자옥아(チャオクよ)」のヒットできっかけをつかみ、この曲での大成功をつかみ取りました。
무조건には「必ず、絶対、とにかく」といった意味があり、韓国人によく使われる言葉です。アップテンポでノリが良く、慕う人への忠誠を歌う歌詞ということもあって、職場の飲み会などで場を盛り上げるのに今でもよく歌われています。
パク・ヒョンビン「곤드레만드레(ゴンドゥレ マンドゥレ)」
박현빈(パク・ヒョンビン)も06年の「곤드레 만드레(ゴンドゥレ マンドゥレ)」で2人に続きます。ちなみに곤드레 만드레は日本語の「ぐでんぐでん、べろんべろん」に当たる言葉。
この曲で成功を収めたあとも、07年「오빠만 믿어(オッパだけ信じて)」、08年の「샤방샤방(シャバン シャバン)」と順調な歌手生活を歩んでいます。
ホン・ジニョン「사랑의 배터리(愛のバッテリー)」
2000年代には、K-POPからトロットに転身し、成功を収めた歌手も現れました。
홍진영(ホン・ジニョン)は当初K-POPのガールグループで活動していましたが、所属事務所の倒産を機にトロット歌手に転身。09年に歌った「사랑의 배터리(愛のバッテリー)」が大ヒットを収めます。
この曲のヒットで、彼女は幅広い世代からの人気を集め、テレビのバラエティ番組でも活躍しています。