豊臣秀吉の命によって日本の武士たちが朝鮮半島に攻め込んだ임진왜란(壬辰・丁酉倭乱/文禄・慶長の役)で目覚ましい活躍を見せた水軍指揮官이순신(李舜臣)を主人公とする『명량(バトル・オーシャン 海上決戦)』(2014)で韓国映画歴代最高の観客動員記録を樹立した김한민(キム・ハンミン)監督。
その後、8年の準備期間を経て、『バトル・オーシャン 海上決戦』で取り上げた명량해전(鳴梁海戦)の5年前を舞台にした『한산: 용의 출현(ハンサン 龍の出現)』(2022)と、今回紹介する『노량: 죽음의 바다(ノリャン 死の海)』(2023)を一気に完成させた。
スタジオ内で撮影された迫力の海戦シーン
朝鮮出兵から7年目となる1598年。前年、鳴梁海戦で敗北し、陸上でも苦戦を続けていた日本軍の武将たちの元に豊臣秀吉死去の知らせが届き、全軍の撤退が決まる。
要衝となった순천(順天)を守る小西行長は、明の水軍都督・진린(陳璘)の助けを得て退避しようと考えるが、朝鮮の水軍を率いる李舜臣はこの機会を逃さず、日本軍を攻め立てる。
ソウルの目抜き通りである세종로(世宗路)と부산(釜山)の용두산공원(龍頭山公園)に堂々たる銅像が建てられ、韓国では知らない人のいない英雄・李舜臣。
キム・ハンミン監督は、陰謀によって閑職に追いやられていた李舜臣が再び水軍を率いて出陣し、不利な状況の中で戦う姿をダイナミックな映像で再現した『バトル・オーシャン 海上決戦』で成功を収めた後、『ハンサン 龍の出現』、『ノリャン 死の海』では、海上の撮影を行わずに、スタジオ内に作られたセットとCG技術を駆使してスケールアップした海戦シーンを作り上げている。
悲しみを秘めた李舜臣をキム・ユンソクが演じる
このシリーズが興味深いのは、同じ人物を3人の俳優たちが演じている点だ。『バトル・オーシャン 海上決戦』では、最新作『파묘(破墓 パミョ)』(2024)でも存在感を発揮した최민식(チェ・ミンシク)、『ハンサン 龍の出現』では、『최종병기 활(神弓ーKAMIYUMIー)』(2011)に続いてキム・ハンミン監督と組んだ박해일(パク・ヘイル)が、それぞれの持ち味を生かした李舜臣像を作り上げた。
完結編となった『ノリャン 死の海』では、『모가디슈(モガディシュ 脱出までの14日間)』(2021)の김윤석(キム・ユンソク)が、最愛の息子をはじめ、多くの部下や同僚を失った悲しみを胸に秘め、壮絶な戦いへと挑む李舜臣を威厳たっぷりに演じている。
ベテランから若手まで多彩なキャスティング
前作『ハンサン 龍の出現』では、敵役となる脇坂安治を演じた변요한(ピョン・ヨハン)の好演が話題を呼び、百想芸術大賞、大鐘賞、青龍賞で助演賞を受賞した。
一方、『ノリャン 死の海』では、朝鮮の友軍である明の武将たちに大きなウエートが置かれている。李舜臣の人間的な魅力に引き込まれていく明の水軍都督・陳璘を演じているのは『기묘한 가족(感染家族)』(2019)の정재영(チョン・ジェヨン)。
また、副都督・등자룡(鄧子龍)役に『モガディシュ 脱出までの14日間』でもキム・ユンソクと共演した허준호(ホ・ジュノ)が扮している。
さらに、出番は少ないものの李舜臣の長男이회(イ・フェ)役にドラマ『이태원 클라쓰(梨泰院クラス)』(2020)の안보현(アン・ボヒョン)、三男이면(イ・ミョン)役に『동감(同感〜時が交差する初恋〜)』(2022)の여진구(ヨ・ジング)と、人気の若手俳優たちも顔を見せている。